手話関係者の健康フォーラム2024 in 岡山
手話関係者の健康フォーラム2024 in 岡山
2025年2月22日(土)10:00~15:30に美観地区で有名なライフパーク倉敷で、健康フォーラムが開催されました。参加者は北海道から九州まで合わせて36人でした。
この健康フォーラムは一般財団法人全日本ろうあ連盟、一般社団法人日本手話通訳士協会、一般社団法人全国手話通訳問題研究会の3団体で構成されている「手話関係者の健康を考える3団体委員会(以下、健康3団体)」の主催です。
開会にあたり健康3団体の吉野幸代委員長から「優生保護法裁判の勝訴や、大阪の逸失利益100%の判決は、関係者が共に運動を続けてきた結果であり、運動を続けることは大切。今年開催されるデフリンピックも協力しながら進めていきたい。手話通訳や活動には健康第一。本日も、講演と意見交換で有意義なフォーラムにしたい」と挨拶がありました。
まず、垰田和史先生から「見直そう!私たちの仕事、活動、生活を~体も心も元気に過ごすために~」をテーマに講演がありました。頸肩腕障害を専門とする医師になったのは、大学卒業後に岡山で医師として働いているときに手を動かせないと受診された方がどの科でも専門外となり、学生時代に少し覚えがあった頸肩腕障害ではないかと思い、頸肩腕障害についてさらに勉強をしたいと滋賀医科大学へ、大学院に入り、その時に、手が動かせないと手話通訳者の方が受診され、同じように重症の方たちがいるとわかって、頸肩腕障害を診られる医者は自分しかいないと決心したそうです。
手話通訳者は、自分がいないと地域の聴覚障害者が困るという思いで、心も体もボロボロになるまで休まない人が多いのです。登録手話通訳者も含め本来は雇用主が健康に配慮しなければならないのに、現実はそうではない状況です。
人間の体は、夜活動するようにできてはいないので、睡眠と休息は絶対必要です。また、趣味や娯楽といった楽しい時間を作ることも大切で、それが心の疲れをとってくれます。
仕事をするうえで、残業をしなくても十分に趣味を楽しめる人は40%だそうです。残業が月10時間くらいなら、外食をしようと気持ちにもゆとりができますが、残業が多いと疲れが溜まり、家族とも話したくないような状態になって「過労うつ」で自殺する人が増えてしまいます。定年退職後することがなく家にずっといて、奥さんから持て余される「濡れ落ち葉症候群」のような人も多いそうです。
働きすぎの状況にある職種として、医師と教員を例に話されました。教師の場合、8時間分の残業手当を給与に組み入れているので、働かせ放題です (昭和41年調べ)。医師は、1か月に100時間を超えた残業をしています。それでは結婚しても子育てができません。現在、医師国家試験を合格する方の半数は女性です。医師は年間960時間残業しないと、医療崩壊するという調べもあるとのことでした。
垰田先生は以前、家族でスウェーデンで1年半生活されたことがあるそうです。スウェーデンは過労死がない国で、国民の生活から多くを学んだそうです。スウェーデンでは積極的に育休を取ります。双子が多いと思ったら育休中にもう一人子どもを作るから、双子に見えてしまうそうです。たくさんの男性が育休を取りやさしい目線で子どもと触れ合っています。そして子どもの頃から権利を守ることを教えるのです。日本は育休を取る人が少ないから子どもに対する目線が厳しくなるのでしょうか。ストレッチの様子
午後は、「めざせ!いきいきライフスタイル」をメインテーマにグループワークを行いました。サブテーマは「今日の講演を聞いての感想」「病気の経験」「日頃から健康に心がけていること」「健康維持管理法」「ろう者通訳について」で、5グループに分かれて話し合い、グループ毎にろう者とペアで報告しました。
手話通訳で頸腕になることを知らずに一人に手話通訳が集中してしまったり、手話通訳でしんどい思いをしていると気づかなかったり、活動が忙しくてストレスがたまったなど体調不良のことや、毎朝しているストレッチやウォーキング、趣味の手芸に没頭するなど、さまざまな健康方法など意見交換しました。ろう者通訳については、聞こえる・聞こえないにかかわらずお互いの役割を明確にして、将来的には一緒に通訳をするようになるだろうという意見もありました。
最後に全日本ろうあ連盟の嶋本恭則理事から、「人は誰でも楽しく生きるべきで、職場も活動も楽しみながら質を追求し、障害者を社会全体で支えていく仕組みづくりを考えていかないといけない」というまとめの挨拶で終了しました。
こうして、ご参加の皆様、全通研岡山支部の皆様のご協力で、手話関係者の健康フォーラムin岡山を盛況のうちに終えることができました。ありがとうございました。
今回のフォーラムは、健康でいるために、元気に過ごすためにという観点で開催しました。
垰田先生のいつもとは趣向の違う話に、いつもに増して先生を身近に感じられ、頸肩腕障害の専門医になってくださったことへの感謝の気持ちもさらに深くなりました。また、グループワークでざっくばらんに話ができ、気持ちがすっきりとして仲間と話すことの大切さも再認識できたと思います。日々活動に、学習にお忙しい会員の皆様には、今回の垰田先生のお話から大切なことをもう一度。健康のためにも、頭の働きのためにも大切なのは睡眠です。どんなにお忙しくても睡眠はしっかり取りましょう。そして、また元気に集いましょう。
(文・写真/吉野州正理事)
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