WEB学習会「改正障害者差別解消法を考えよう」
WEB学習会「改正障害者差別解消法を考えよう」
2025年1月11日(土)午前10時から正午まで。WEB学習会「改正差別解消法を考えよう」のテーマで、全通研大阪支部 井澤 昭夫支部長をお招きし、Zoomにてご講義とグループディスカッションを行いました。当日の参加者は56人(委員を含める)でしたが、事前のお申し込みは80人近かったので、関心の高い内容だったのだなと感じました。
障害者差別解消法は、2021年5月に改正され、同改正法は2024年4月より施行されました。障害を理由とした差別的取扱いの禁止と合理的配慮の提供は、行政のみでなく、民間事業所にも義務化されたことで、どのような変化や問題点が浮き彫りになっているかを、井澤さんから具体的に実例を挙げられました。まず、この法律は「障害者自身が、手話通訳を求めるなどの具体的な配慮の要求をしない自発的にしない限り、行政や事業者は配慮をしなくてよいということなっている」となっています。これでは、事業者側の意識の差でできないと言われたり、配慮が行き届かなくなります。また、合理的配慮をする場合、過重な負担…つまり費用ががかかることを理由に、実際には配慮が行われないということでした。
事業所に合理的配慮を求めたが、できないと言われてしまった場合に、法律の中に代替手段が明記されていないため、各自治体(設置手話通訳者等の行政職員)の判断で対応することになり、あの市では対応できるが、この市では対応していないと、同じ制度なのに一貫性に欠けた事態となっているとのことでした。
また、手話通訳者の派遣に関する要綱についても問題点が挙げられました。派遣要綱は自治体によって異なっていること、解釈を曖昧にしている部分があることから、手話通訳者等が必要な場面で「派遣ができない」と言われるケースが出てきているようです。
さらに、専任・設置手話通訳者を派遣するという考えも地域によって対応が異なり、実際の業務において困難を引き起こす原因にもなっている、と懸念されていました。
いくつか、具体的な事例を紹介いただきました。①税務署に出向く手話通訳派遣申請を自治体が一旦保留にして、「自分で税務署に依頼しなさい」と当事者に要求しました。この事案は、税務署が自治体に手話通訳者の依頼をするという対応で処置されました。②ある自治体の差別解消法の案内チラシには、市が派遣できない場合は県の手話通訳を頼んでくださいと記載されており、市が意思疎通支援事業を運営しているという役割が不明確になっているということ。③高齢のろう者が市役所に代理電話を依頼した際、設置手話通訳者は「代理電話はもうできない。公共インフラの電話リレーサービスを利用してください」と言ったという話。便利に使える人ばかりでない障害者がいること、実際に登録もしていない、おそらく一人では利用できないであろう、ろう高齢者に対しての代替手段が十分に用意されていなかったという内容で、情報提供施設が代理電話をしたということでした。
今後の課題という話の中で井澤さんからは、「差別解消法の光と影」というお言葉がありました。光とは合理的配慮の提供。本来私たちは聞こえない人の情報保障と生活しやすい環境をつくっていくためにと業務遂行しているはずなのに、それを狭める判断や行為に加担していることがあり、それが影であると言われていました。
参加された皆さんは、共感されたり、身につまされたりするような内容があったのではないでしょうか。いろいろな葛藤があって活動しているが、それを含めて生きがいと捉えて活動を続けてほしいという言葉でお話しを締めくくられました。井澤さんからの多岐にわたる事例やご提案を日々の業務や活動に活かしていきたいですね。また、我々自治体業務・政策研究委員会や全通研本部には、こんなことを調査・情報収集をしてはどうかと、たくさんの宿題が出されたように感じました。2時間という短い時間ではありましたが、グループでの意見交換もしていただき、知識が深められたと感じてくださっていたら、スタッフ一同嬉しく思います。
次回の学習会にはぜひ、日頃このような学習会に参加されないお仲間を誘ってみてください。できれば対面で、たくさんの会員の皆さんともっともっと共に学んでいきたいです!
【参加者の集合写真】
※講演資料について、お詫びと訂正です。
「2 解消法の問題点①②②」となっていますが、「①②③」に修正してください。
よろしくお願いいたします。
報告者:阿部恵子(全通研 自治体業務・政策研究委員会)
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