「優生保護法問題の政治的早期・全面解決を求める3.21院内集会」
2024年3月21日(木・祝)は、11月1日(水)に続き開催された「最高裁判決を待つまでもない!優生保護法問題の政治的早期・全面解決を求める3・21院内集会」に参加しました。
風が強い一日でしたが、よく晴れていました。国会議事堂を見て衆議院第一議員会館に入りました。会場は地下1階の大会議室でした。
会場に入るとすぐに目立ったのが、大きな看板でした。
12時から院内集会が始まりました。会場は多くの人で埋め尽くされました。
司会は、前半担当の池澤さん(優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会、以下「優生連」)と後半を担当する関谷さん(東京弁護士会)のお二人でした。
はじめに残念ながら亡くなられた熊本原告の渡邊數美(かずみ)さんを偲んで、テレビで取り上げられた映像のビデオ放映がありました。
続いて、たくさんの国会議員に出席いただきました。その都度、参加された議員からメッセージをもらいました。
多くの議員が話されていたのは、「救済法は議員立法であることに議員として責任があると考えている。また、この法律に基づく一時金の請求期限がこの4月23日に迫っている。衆議院ではこの期限の5年間の延長が可決した。参議院でも、この国会で成立をさせていくことが必要」と訴えていました。
議員の前でアピール文が読み上げられました。読み上げたのは北三郎さん(仮名)(東京地裁・東京高裁・最高裁)です。そのアピール文を国会議員に手渡しました。
「最高裁でのたたかいと今後の運動について」と題して新里宏二弁護士から話しがありました。
2013年8月に飯塚さんから相談があって始めた取り組みである。原告第1号の佐藤さんと闘いを始めた。飯塚さん、佐藤さんに続いて全国に広がった。39人の原告がいます。その中の一人であった渡邊數美さんは、3月13日の福岡高裁の判決を待たずに亡くなってしまった。本人が一番悔しかったのではないか。
裁判をはじめた当初、裁判は負け続けました。仙台高裁では、賠償を求められる20年の除斥期間が過ぎたと負けてしまいました。負けるのですが多くの判決が「これは酷い人権侵害だ。憲法に違反する」と違憲判決が出ました。その積み上げで大阪高裁、東京高裁で勝訴の判決が出ました。
最高裁に署名をした11月1日に大法廷回付されることが決まりました。15人の裁判官で判断をすることになる。違憲の判断をするかどうか、これまでの最高裁の判例を変えるかどうかが問われる。
仙台の2人だけ裁判に負けている。しかし、この2人の動きがなければ今の状態にはならなかった。こんな馬鹿なことがあるのか。5月29日に最高裁で当事者の意見を聞く弁論がある。当事者の声を届けることにより、きっと最高裁は私たちが求める判断をしてくれるものと思う。そして、内閣総理大臣が謝罪をすることを勝ち取っていく。
優生思想が蔓延している日本の中で、優生思想を打破するために、今日は、こんなに多くの人が集まってくれました。「今まさに解決するときだ」という皆さんの声を最高裁に訴え、そして国会に伝えていきたいと思います。
次に「最高裁判決を待つまでもない!早期・全面解決に向けて」と題してきこえない山本さん(優生連共同代表)から話しがありました。
なぜ、このテーマにしたのか。原告には多くのろう者がいます。私は、手話の使用禁止の中で育ちました。障害がある人が障害のない人に従うことが当たり前にされてきた状況がありました。そこには、優生思想を法律化した優生保護法が大きく影響したと考えています。
優生保護法は障害がある人たちに対して、不良な子孫といった誤った障害者観を市民に広めました。悪しき歴史です。全面解決に向けて闘ってきました。最高裁大法廷の判断は全ての優生裁判に大きく影響を及ぼします。
6人の原告がすでに亡くなっている現状を見てほしい。優生保護法の問題の解決はまったなしの状況です。
私たちは、国に対して最高裁の判決を待つまでもなく、被害者の高齢に鑑み全面解決することを求めています。最高裁の判決を待つまでもないということでこの集会のテーマにしました。
私たちが求めている全面解決は、国がこの法律を作った国会で、甚大な被害を受けてきた原告や被害者に対して正式な謝罪を決議し、被害に対する正当な償いするための法律を作ること。二度とこのような歴史を繰り返さないためにも、更なる調査・実態把握をする。優生保護法の検証と総括をすること、つまり被害者当事者や関係者などの第3者を入れて総括することを求めます。
優生保護法は改正されても優生思想は根強くはびこり、優生保護法問題は解決されずに残っています。国はこれ以上待っている時間はありません。憲法を守り、国連の障害者権利条約にあった解決を求め、最高裁の判決を待つまでもないことを訴えます。
そして、最高裁大法廷回付された事件の原告より表明がありました。
・飯塚淳子さん・佐藤路子さん(仙台地裁・仙台高裁・最高裁)
・小林寛二さん(ろう)・鈴木由美さん(神戸地裁・大阪高裁・最高裁)
また、連帯のメッセージとして市川沙央さん(芥川賞作家)と林陽子さん(元国連女性差別撤廃委員会委員長)は、紙面を通して訴えがありました。
続いて、登壇して4人から連帯のメッセージがありました。あいさつの中で私が印象に残った激励の部分を記載します。
・阿部一彦さん(JDF代表)
私たちが、また次の世代の人々が安心して過ごせる社会のありようを考え、それを作り出していく努力が今求められています。
そのような中にあって優生保護法による被害を自ら受けながら、この課題について今を生きる全ての人に問い続け闘っている原告の皆さま、弁護団の皆さま、優生連の皆さまに敬意を表します。
JDFの13団体で応援していくこと、そしてともに活動していくことが大変重要なことだと考えています。
・佐々木桃子さん(全国手をつなぐ育成会連合会会長)
この法律により障害者は排除され、障害のある人たちの対する差別や偏見に繋がっていった。強制不妊手術を受けた人だけではなく、障害のある人にも排除し差別や偏見をつくる社会にした一つの要因であったと考えます。
人は、誰もが一人ひとり違います。その一人ひとりを認め合い、誰に対しても思いやりのある社会になってほしいと願っています。差別や偏見のない社会の実現に向け、最高裁大法廷において審議されます。ここに参加した議員の皆さまには早期解決、全面解決に向けてご尽力いただきたい。
・雨宮処凜さん(作家・反貧困ネットワーク世話人)
北海道にいる知的障害のある従姉妹は、自分の体調が急に悪くなったが自分で病状を言えないので病院には受け入れられないということで、あっという間に亡くなってしまいました。日本の社会の見え方が変わりました。衝撃的なことがあった。北海道の施設で不妊手術のことがあった。どんどん酷くなっているので、一緒に声を上げていきたいと思います。
・高井ゆと里さん(群馬大学教員)
私が特に考えるのはトランスジェンダーの人たちのことです。戸籍や住民票に書かれた性別が食いちがう人たちがいます。昨年、最高裁で違憲判決が出ましたが、「トランスジェンダーの人たちが子どもを産むと社会が混乱する」といった曖昧な理由に基づいて、この人権侵害が続いてきた状況は、許されないことであります。子どもを持つか持たないのかを自分で決める権利を尊重してこなかった誤った歴史があります。
2018年に仙台で優生保護法の裁判が始まってからもう6年になります。私は、トランスジェンダーの権利擁護者として、そして、この国に生きる一人の市民として、この会場にいる、そして全国で聞いている全ての皆さんに対する連帯を表明します。国は一刻も早く謝罪をしてください。
次に原告の声として3人の方から意見表明がありました。
・千葉広和さん(仙台地裁・仙台高裁・最高裁)
・朝倉典子さん(福岡地裁・福岡高裁) きこえない人
・日田梅さん(福岡地裁) きこえない人
そして、熊本原告の渡邊數美さんのこれまでの闘いについての報告がありました。
松本さん(優生連)から最高裁あての署名のとりくみについての発言がありました。
これまで3回、下記の日に署名を最高裁に提出しました。
・1回目 11月1日
・2回目 2月7日
・3回目 3月21日
最高裁にこれまで届けた署名の総計は269,969筆になりました。何としても3月31日までに30万筆にして届けたいので協力してほしいと訴えがありました。
閉会のあいさつがありました。
「5月29日に最高裁回付が開催されます。最高裁の15人の裁判官には原告の声をきちんと聞いてほしい。この日は傍聴できるのでぜひ多くの仲間で最高裁を囲んでほしい」と協力の訴えがありました。
仙台、大阪、兵庫、福岡の会場を画面に映しながらアピール文を大きな拍手で決議しました。
そして司会から本日の参加者は、会場359人、オンライン227人の合計586人の多くの方に集まってもらいました。そして、会場でのカンパも10万円弱集まったと報告がありました。
14時30分にすべてが終了して、解散しました。
このあと15時から首相官邸前でアピール行動がありました。今回は、残念ながら用事があって参加できませんでした。
(文:全通研会長 渡辺正夫)
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