WEB学習会「学ぼう!障害者権利条約と地方自治体の役割」
1月20日(土)10時~、WEB学習会「学ぼう!障害者権利条約と地方自治体の役割~ろう者の権利と情報保障など~」を開催しました。このテーマは、2023年11月18日に川根紀夫氏(順天堂大学非常勤講師)を講師に迎えて学習しましたが、今回はその第2弾です。難しいテーマですが、80人を超える会員さんから申し込みがあり、皆さんの意識の高さが伺えます。
講師は、弁護士の池原毅和先生です。これまでにも研究誌125号、129号、135号、146号、165号や、156号~159号では、「障害者差別解消法とその課題」で連載いただくなど、池原先生には大変お世話になっています。
今回は、障害者権利条約と地方自治体の義務と役割、障害者権利条約と手話、対日総括所見のもっとも重要な指摘、ロードマップの作成などについてお話しいただきました。
憲法98条では、「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」と規定されています。ただ、日本の現状ではまだまだ障害者権利条約の理念が私たちの暮らしの中で生かされているとは言えない状況です。
2022年の日本への総括所見の中では、12か所にも及んで手話に関する事項の指摘がありました。情報へのアクセスについては、「日本の手話が公用語として法律で認められていないこと、手話の教育が行われていないこと、生活のあらゆる場面で手話通訳が行われていないこと」が懸念事項として挙げられ、「手話、イージーリード、平易な言葉、音声記 述、ビデオ転写、字幕、・・・代替手段など、利用しやすいコミュニケーション形式の開発、促進、利用のために十分な資金を割り当てる。日本手話を国レベルの公用語として 法律で認め、生活のあらゆる場面で手話へのアクセスとその使用を促進し、有能な手話通訳者の訓練と利用可能性を確保すること」と勧告されています。私は市役所で働いていますが、行政機関であっても、国がこの勧告を意識し、解決する手段が示されているようには現状では感じられません。地方自治体の職員が感じられないということは、市民にとってはさらに現実の課題とはとらえにくいだろうと思います。時間や費用はかかると思いますが、これは実現すべきことだという意識を持ち続けなければ!と改めて思いました。
また、興味深かったのは、この図です↓。
これは、障害のある人が障害のない人と別に教育を受けたり、一般的な就労ではなく保護的就労を受けるというしくみは、結果的に障害のない人と同様に豊かな経験をしたり自分の力を発揮するような機会から外れてしまうということを表しているものです。「障害があるから」という理由で障害者を集めて特別な対応をするという考え方ではなく、障害のある人がいることが当たり前の社会であり、その人たちと一緒に学び、働き、暮らしていける環境や社会のしくみを作っていく必要があるということだと私は理解しました。
他にもたくさん参考になる話をしていただき、非常に内容の濃い講座でした。一人でこの資料を読み込むより、先生のお話を聞くことで考えるヒントをたくさんいただけました。
全通研支部や手話通訳者仲間、職場の人たちとも、繰り返して学ぶ場を持ちたいと思います。池原先生、貴重な時間をありがとうございました。
この学習会は、全通研の自治体業務・政策研究委員会が企画立案して開催したものです。自治体で手話通訳などの業務をしながら働いている人たちと一緒に学びたいテーマや、意見交換をしながら、もっと暮らしやすい社会にしていくことを目標に自治体業務・政策研究委員会では自治体や先輩手話通訳者へのインタビューなども行っています。これまでの学習会や、インタビューは全通研のホームページからも見ることができますので、良かったら見ていただければと思います。2024年も学習会や意見交換を通じて、会員や自治体職員の皆さんとつながっていきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。
(文:米野規子理事)
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