JD(日本障害者協議会)障害者権利条約プロジェクト学習会
12月19日(月)、18時から20時まで「2022.12.19 JD(日本障害者協議会)障害者権利条約プロジェクト学習会(オンライン)」に参加しました。
今回の学習会は、9月9日(金)に障害者権利条約の日本の報告に関する総括所見(勧告)を受け、10月21日(金)のJD加盟団体の皆さんに向けた学習会に引き続き開催されました。総括所見の第20条からの後半部分について、5人の発表者からそれぞれ担当したところの説明があり、その後、参加者で意見交換をする形で進められました。
司会は、前回と同じく増田一世JD常務理事が務められました。参加者は、集団視聴を含めて約100人でした。
1 第20条から第22条まで 佐野竜平氏(JD理事/法政大学教授)
2 第23条から第25条まで 薗部英夫氏(JD副代表/全障研副委員長)
3 第26条から第28条まで 赤松英知氏(JD政策委員/きょうされん常務理事)
4 第29条から第31条まで 中村敏彦氏(JD理事/ゼンコロ会長)
5 第32条から第33条まで 佐藤久夫氏(JD理事/日本社会事業大学名誉教授)
総括所見の仮訳を見ながら説明を聞きました。その中で、私自身が学び、気づいたことなどについて述べることにします。
1 北海道の社会福祉法人の知的障害者施設で、結婚や同棲を希望する際に不妊処置を条件としていたとの報道がありました。優生思想の考えが現在も続いている事実がここにも現れています。勧告の観点からもあってはならない人権侵害だということを、改めて社会に対して訴えていかなければならない問題です。
2 第21条では、すべての障害者への情報提供やコミュニケーションが不十分であること。自治体間の格差があること。手話言語が公用語として法律で認められていないことについて懸念されるとありました。これを受け、公的に提供されている情報のアクセシビリティを確保するため、あらゆるレベルで法的拘束力のある情報通信基準を策定すること。そして、手話言語を公用語として法律で認めることが勧告されました。
これらの勧告は、パラレルレポートでも触れられている内容が盛り込まれているので、評価できるのではないかということでした。
しかし、手話通訳者・要約筆記者の正規雇用について触れられていなかったこと。また、意思疎通支援の利用制限についても触れられていなかったことは、今後の課題であると指摘がありました。
さらに、意思疎通支援者の養成の充実を考えるとパラレルレポートでは国家資格を作るなどを指摘していたが、これについては勧告には入っていなかった。また、意思疎通支援を必要とする人たち全ての地域で、格差なくニーズを受け止めていくことが課題であると指摘がありました。
3 第24条では、「強く要請する」内容として(b)~(f)*まで具他的な改善内容が書かれていて、そして(a)*に戻るとそれらを含めた総括的な内容が記述されています。
パラレルレポートでは、全ての障害のある児童生徒が、原則として自分の住む地域の通常の学級で学ぶことを可能にする立法上・政策上の措置をとるように求めています。「原則として」ということは「原則として」で、例外も必要としている人がいれば例外もあると考えているとのことでした。
文部科学省は永岡大臣が9月13日に会見をしました。文部科学省として仮訳を早急に作成し、会見に臨んだことになります。永岡大臣は、「特別支援教育は中止せず、通級や支援員の配置など継続していく」と会見で発言したことが大きく報道されました。
文部科学省がいち早く会見をした背景には何があるのかを考えることは、日本の特別支援教育の今後に関わる大事なことだと言えます。
4 第29条では、公職選挙法を改正し、選挙関連情報周知への配慮とともにすべての障害者にとって適切でアクセスしやすく、理解でき、使いやすいものにするように勧告されました。
現在、総務省では全国の自治体に障害者の投票所の使い勝手などを含めた、これまでにない大規模な調査をしています。これまでは、スロープの設置数などの調査だけでしたが、「どんな職員研修をやっていますか」など細かな項目が盛り込まれています。これからの投票に関わって意義のある調査です。これは、障害者団体の運動、NHKの報道、そしてこの総活所見が影響しているのではないかと思われます。
また、参加者から「自分で意志表示することが困難な人の参政権のあり方についても考えてほしいと思います。自立支援法の行方がこの選挙で決まるというときに投票できなかったことがあり、その時はじめて障害があるために投票できないのは悲しいことだと思いました」と発言がありました。
5 第33条では、条約の監視機構として設置された障害者政策員会は内閣府にあり、その範囲は限定されていると懸念され、政府から独立した監視委員会の設立を日本に勧告しています。
パリ原則に基づいた監視委員会は、120の国で設立されていて、その内88がパリ原則を満たしているAランクの評価を受けています。先進国だけでなく途上国にも広がっています。このような独立した機関がないという日本は国際的にも評価を落としている現状にあります。
2度、JDの学習会に参加しましたが、いろいろな方々のお話を聞くことで新たな気づきをもらいました。
特に、「日本政府は今のところ、日本は障害者権利条約をうまく実行しているという認識でいるのではないか」との話を聞いたときに、改めて私たちの暮らしている社会の実態をきちんと政府に訴えていかなければならないと感じました。そして、私たちの目差すことを政策に反映してこそ、私たちの暮らしが良くなっていくのだと感じました。
次回の学習会は、2023年3月11日(土)に、特別セミナーが予定されています。内容は、障害者権利条約の「総括所見を学びつくそう」というテーマで企画されています。有料ですが多くの人に参加してほしいとの呼びかけがありました。
(*注)障害者権利条約の日本の報告に関する総括所見(機械翻訳)
教育(第24条)
52.委員会は、インクルーシブ教育の権利に関する一般的意見第4号(2016年)および持続可能な開発目標4、目標4.5および指標4(a)を想起し、締約国に対し、次のことを強く要請する。
(a)分離された特別な教育をやめる目的で、教育に関する国家政策、法律、行政上の取り決めの中で、障害のある子どもがインクルーシブ教育を受ける権利を認識し、すべての障害のある生徒が、あらゆるレベルの教育において、合理的配慮と必要とする個別の支援を受けられるように、特定の目標、時間枠、十分な予算で、質の高いインクルーシブ教育に関する国家行動計画を採択すること。
(b)すべての障害児の普通学校への通学を保障し、普通学校が障害児の普通学校を拒否することを許さない「不登校」条項と方針を打ち出し、特殊学級関連の大臣告示を撤回すること。
(c)障害のあるすべての子どもたちが、個々の教育的要求を満たし、インクルーシブ教育を確保するための合理的配慮を保証する。
(d)インクルーシブ教育について、通常教育の教員および教員以外の教育関係者の研修を確実に行い、障害者の人権モデルについての認識を高めること。
(e)点字、イージーリード、ろう児の手話教育、包括的教育環境におけるろう文化の促進、盲ろう児の包括的教育へのアクセスなど、通常の教育環境における拡張・代替コミュニケーション様式および方法の使用を保証すること。
(f)大学入試や学習過程など、高等教育における障害のある学生のバリアに対応する、全国的な包括的政策を策定する。
2022年12月20日
全通研 会長 渡辺正夫
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コメント
全通研のどなたかの学習会報告文の形ですが、このような情報が「無料」で拝見できるのはありがたいことです。
どうか頑張ってください。
投稿: | 2023年1月26日 (木) 17時15分