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2022年10月28日 (金)

日本障害者協議会(JD)障害者権利条約プロジェクト学習会

 10月21日(金)、15時から17時までで「202210.21 日本障害者協議会(JD)障害者権利条約プロジェクト学習会(オンライン)」に参加しました。

 今回の学習会は、JD加盟団体の皆さんに向けて開催されました。障害者権利条約の日本の報告に関する総括所見(勧告)が読みあげられ、その後、参加者で意見交換をする形で進められました。

 総括所見(勧告)は99日に国際連合のホームページに公開されました。

https://view.officeapps.live.com/op/view.aspx?src=https%3A%2F%2Ftbinternet.ohchr.org%2FTreaties%2FCRPD%2FShared%2520Documents%2FJPN%2FCRPD_C_JPN_CO_1_49917_E.docx&wdOrigin=BROWSELINK (オリジナル:英語)

 

 増田一世JD常務理事が司会を務められました。私は参加者全員の画面を見ることはできませんでしたが、約100人の参加がありました。

 4人の発表者からそれぞれ自身が担当したところについて説明されました。発表の都度、参加者と意見交換をしました。

 

1 第1条から第4条まで   佐藤久夫氏(JD理事)

2 第5条から第10条まで   薗部英夫氏(JD副代表)

3 第11条から第16条まで  中村敏彦氏(JD理事)

4 第17条から第19条まで  赤松英知氏(JD政策委員)

 

 総括所見の仮訳の資料を見ながら説明を聞きました。その中で、私が考えされられたり、気がついたりしたことについて述べることにします。

 

1 総括所見で指摘されている内容について、日本政府は「すでにやっていることだ。これで十分だ。これ以上何をせよと言うのか」という対応をしている。このような政府のスタンスをどう打ち破っていくか。理論的にも運動面でもしっかりとした取り組みが必要である。

 

2 障害者権利条約の条文のどこに人権モデルを表す文書があるのかということだが、それは目的の第1条に「障害のない市民と等しく尊厳と権利を持っている。人であることを基盤とする人権の主体である」こと。また、第3条にも「障害というのは人類の多様性の一部である」こと。条文には障害の重さについてしるされていないが、第12条で「どんなに重い障害であっても自分自身が判断し決定する主体である」こと。第27条でも「一般雇用で十分な賃金を得て生活をたてる機会を有する権利がある」などが書かれている。総論的でも各論部分でも平等な市民として権利の主体であるということ。女性差別撤廃だとか人種差別撤廃など国連の人権分野が基礎にしている人権モデルを、障害分野にも持ち込んだということ。権利条約全体が人権モデルになっている。

 

3 「一般的意見」が総括所見の中で度々出てくるが、これらについてはきちんと学んでおく必要がある。また、ガイドラインやSDGsなどについても同様に学ぶ必要がある。

 

4 旧優生保護法については、総括所見第17条に「優生手術の被害者に対する補償制度の改正」と書かれている。具体的には「一時金支給法を改正しなさい」と言うことだが、これが補償制度になっているところについては、我々の権利委員会に対するインプットが不十分であった。あくまで一時金であって補償することにはなっていない。

 「補助・代替コミュニケーション手段、情報へのアクセス」については、被害者の中にはだまされて手術を受けた人、自分が被害を受けたことすら分からない人もいる。障害特性から自分の被害を訴えられない人もいるのに、ただただ申請を待つだけでは、情報提供や合理的配慮の点で問題がある。

 「申請期間を限定しない」では、一時金支給法が5年となっているので、総括所見では一時金支給法の改善について、しっかり書いてくれた。根本的な解決に向けて議論をさらに深めていく必要がある。

 

5 国は建設的対話の中で「優生保護法に関して20年の除斥期間について現在裁判になっているが、政府は法律に則り一時金を円滑に支給することで責務を果たしてきた。政府として真摯に反省し心からお詫びするにはかわりない」と、発言していた。しかし、大阪高裁、東京高裁で原告勝訴の判決が出たにもかかわらず、これを受け入れず、最高裁に上告して闘おうとしている。このことには何も触れずにただお詫びの気持ちを示しているとだけ言っていた。

 

 意見交換では、「私たち一人ひとりの人権意識が問われているのではないか」「脱施設と言われているが、現状は施設が足りない状況にある。障害者のくらしの場では、50代の子どもを80代の親が支援している5080の問題が当たり前の状況である」「勧告について日本でどう実践していくかは、これからも議論していかなければならないこと」などの意見交換が活発に行われました。

 次回の学習会は、1219日(月)、18時から20時までオンラインで開催を予定しています。内容は、総括所見の後半(第20条から第33条まで)を取り上げて学習することになっています。一緒に学習をするために積極的な参加を期待しています。

 

                                                      2022年10月21日

                                  全通研 会長 渡辺正夫

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2022年10月27日 (木)

支部長会議

 20221016()2022年度支部長会議がオンラインで開催され、全国45支部から支部長、または代理の方々が出席しました。コロナ禍の影響を受け、一昨年は中止、昨年は支部代表者会議となったため、3年ぶりの開催となりました。

 午前は全体会、午後はグループ討議を行いました。

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 全体会は、20225月に施行された「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」に関する学習会で、伊藤利明健康対策部長の話でした。

 先日開催された緊急勉強会での滝波宏文参議院議員の話をさらに分かりやすく解説されました。この法律が施行されたのは、私達の『We love コミュニケーション』パンフ運動による約116万筆の署名が大きな役割を果たしています。この法律は、全ての障害者があらゆる活動をするために必要な情報保障を得られる社会を目指しているもので、国、地方自治体、公共団体の責務の他、議員立法にも関わらず財政上の措置が明記されていることに意味のあることだということです。また、各省庁横断的な討議の場を設けること、意思疎通支援者の技術、資質向上にも触れられていることもポイントに挙げられていました。

「障害者に優しい社会は、健常者にも生きやすい社会」という言葉が印象的で、そのような社会を目指して、自分たちもその一端を担う者としての自覚を持ち、活動していかなければならないと改めて考えさせられました。

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 全体会は、伊藤正事務局長による「登録手話通訳者の実態に関する調査」についての学習会でした。この学習会は「情報の共有」「視点の共有」が目的であるという言葉に身が引き締まる思いがしました。

 この調査は2021年9月から11月に行われた登録手話通訳者を対象に行われたアンケートで、全国手話研修センターが厚生労働省の補助事業として行い、実務を全通研が担ったものです。聴覚障害者の社会参加の推進やICT技術の発達により手話通訳のニーズが広がり、手話通訳者の専門性や人材育成のカリキュラムの見直しが求められていることを背景に、現状を知るために行われた調査です。この調査結果を受けて、現状把握と課題の見直しや発見、そしてその課題と学びの共有がスタートということです。課題は地域によって違いがあるかもしれないが、個人で学習したことを発信していくことが大切なのだという話でした。発信力に自信のない自分自身を振り返り、それでも何か小さな力の一つにはなれるように、この支部長会議で得られたこと、また理事となって得られるさまざまなことを発信していきたいと思いました。

 午後は、グループ別討議でした。6グループに分かれての討議後、各グループ代表による討議内容の発表を行いました。どのグループでも挙げられていたのは、新規会員、特に若い会員を増やすことの難しさでした。これは各支部がその課題に真剣に取り組んでいることの表れだと思います。まとめの発表を聞いていて、会員の皆さんが懸命に活動していらっしゃることが伺えて、改めて共に活動する仲間がいることの心強さを感じました。

 最後に、宮澤典子副会長から、関係団体と取り組むことで良い成果に繋がりやすいこと、未来のための人材育成が必要であることなど、まとめがありました。その中で、「制度にしても組織にしても人と話すことが基本」、「違う職種の人と話すことが大切」であるという言葉が印象に残りました。

 そして、グループ討議の報告の中にもあり、宮澤副会長からもあったこの言葉で、この報告を終わりにしたいと思います。皆さん一緒に、元気ににこにこ活動していきましょう!!

                        (理事 中島純子)

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2022年10月21日 (金)

JD障害者権利条約プロジェクト学習会レポート

★JD障害者権利条約プロジェクト学習会レポート

                                                                  理事:伊藤利明、伊藤正、吉野州正

9月27日(火)18時~20時、「障害者権利条約の国別審査」をテーマに、JD学習会(zoomによるオンライン方式)が開催されました。

 

◆司会者あいさつ

 司会の増田一世常務理事から、学習会のポイントとして「日本の国別審査までのプロセス」と「現地でのロビー活動」の共有が挙げられました。国別審査そのものだけではなく、国別審査に至るプロセスの大切さを重視したいとのこと。

 気になる「総括所見」は、第二部で触れるが次回の学習会で詳しく学びたい、とのことでした。

 

◆第1部 障害者権利条約の対日審査をめぐって

○対日審査までのJDFの取り組み:佐藤久夫(JD理事/日本社会事業大学名誉教授)

・障害者権利条約に至るまでの、障害者権利宣言など国連の関連する条約制定の歴史を把握することの大切さを強調したい。

・その上で、条約批准後に受けなければならない「国別審査」について、権利条約から見た日本の障害者施策の評価になることを踏まえ、JDFは、障害者権利条約の推進を目的に掲げている団体としてパラレルレポートの作成に組織的に取り組んだ。

・今回出された「総括所見」を読むと、現地のロビー活動だけではなく、事前提出したパラレルレポートを国連障害者権利委員(以下、委員)が読み込んでいることがわかり、レポート作成の効果を感じている。

・今後、国別審査は4年ごとにあり、次回は2028年2月(時期がずれるのはコロナの影響)に実施される。スケジュールに合わせて、2026年3月までに国連に次のパラレルレポートを提出したい。

・「総括所見」の日本政府公定訳が出る時期はわからない。日本政府はまだ読み込んでいないようで、しばらく時間がかかると予想している。

 

〇ロビー活動,そして対日審査の概要:赤松英知(JD政策委員/きょうされん常務理事)

JDFは、全部で3回パラレルレポートを提出。1回目のパラレルレポートは120ページと分量が多いが、現状と課題がしっかり書き込まれていて、提出後も機会あるごとに立ち返って参考にしている。ぜひみなさんも読んでほしい。

・今回ジュネーブに日本から行った障害当事者・関係者は全部で100人ほど。政府からは28人。教育に特化した団体もあり目的はさまざま。

・現地のロビー活動で印象に残ったのは、「プライベートブリーフィング」という当事者団体から委員への非公開の説明の機会があったこと。非公開の理由は、説明の中で政府批判が出ると国によっては当事者に不利益をもたらすことがあるとのこと。マスコミも入れない。同行した船後議員も国会議員ということで入れなかった。

・「建設的対話」から印象に残ったこといくつか。

「8条:啓発」 JDFからは「条約の理念の不足」「やまゆり園事件の再発防止策で国の指導が弱い」などを指摘。政府の姿勢には違和感がある。優生思想根絶のため、地域フォーラム開催など広報活動を行っているというが、本当に条約を理解しているか疑問。国主導で取り組んでいるとは思えない。

11条:災害」 JDFからは、「災害時の合理的配慮について法的根拠がない」ことを指摘。政府は「障害者差別解消法の制定など必要なことはしている」と報告していた。

17条:個人の尊重」 優生裁判が課題。政府は優生保護法についても取り組んでいると説明しているが、実際は大阪高裁、東京高裁で上告している。このことから見ても、国は我々に「ファイテイングポーズ」をとり続けている。ただ、総括所見を見ると、こちらの課題の指摘が弱かった感じがあり、ロビー活動が不十分だったと反省している。

19条:地域生活移行」 政府回答は「(施設の)内外で花見はできる」というものだった。総括所見では施設入所の縮小への努力を厳しく求められた。

27条:福祉労働」 政府は「個人の経済活動の支援はできない」「2022年度から重度障害者の通勤支援を可能とした」と回答。しかし、この変更の対象となる障害者はわずかであり、総括所見では障害者の社会参加支援の不十分さが指摘された。

 

〇権利委員へのロビー活動を通して:南由美子(全難聴国際部副部長)

・全難聴の代表として参加。これまでもJDFのパラレルレポート作成や、障害のある女性としてDPIの女性ネットにも参加してきた。

17人の委員全員に面談を申し入れ、3人からOKが出て817日に面談し、私は日本における中等度難聴者の社会的不利について説明した。具体的には、現在の日本の障害者福祉制度では、聴力障害の認定は医学モデルが残っている。中等度難聴者は障害者と認定されず合理的配慮が受けられないことを説明し、認定基準について条約の理念である人権モデルへの見直しの必要性を訴えた。

・現地で印象に残ったことは、全難聴と全日本ろうあ連盟が、ブリーフィングの準備として「障害認定基準が人権モデルではない」という回答案を共同で取りまとめたこと。同じ聴覚障害者として意見交換できたことは貴重な経験となった。ロビー活動の大切さを学んだ。

・また、障害認定基準の人権モデル化について、当事者からの発信の重要性も学んだ。今までの自分の取り組みが不十分だったと反省している。今後は具体的な行動に取り組んでいきたい。

 

〇ロビー活動/対日審査を傍聴して:竹内智彦,柴田静(ゼンコロ),松本尭久(きょうされん)

<松本>

 写真をベースに現地の風景、会場、メンバーの活動の様子を説明。

 

<柴田>

・「建設的対話」について。政府回答は国会答弁のようで淡々と述べるだけだった。それに対して委員の言葉からは熱意が感じられた。私たちのロビー活動の効果を感じた。

・総括所見について。私は視覚障害者だが、所見にあった「マラケシュ条約:視覚障害者の読書の権利を規定」や情報アクセシビリティの主張に感銘を受けた。自分の中で若い時の取り組みに結び付いた。

・「教育」「雇用」について。私が若い時はインクルーシブや統合教育が言われていたが、いつのまにか「分離」になっていた。これについて「なくす方向」という勧告があり、ありがたかった。今後の取り組みが大切になると感じている。

・新規採用する若い障害者と話をすると「普通の人はこわい」という意見が多い。新人だけではなく、卒業後10年たっても同じことを話す人がいる。過去につらい経験をしていると想定される。施策以外の取り組みの必要性を感じている。

 

<竹内>

・ブリーフィングについて。(当事者からの)情報提供の大切さを感じた。最初は、委員の政府に対するコメントは弱いという印象だった。ブリーフィングの中で、(当事者の)意見を聞く中で姿勢が変わっていった。国連の委員は(当事者の)意見を聞く姿勢があることがわかった。

・国別審査について。関係者の努力の継続の重要性を感じている。審査の最後に委員が「政府は当事者と継続してコミュニケーションをとってほしい」と述べたが、法制度へ継続的にコミットしていくことの重要性を感じた。

・今後も権利条約には継続して関わっていきたい。

 

◆第2部 総括所見をめぐって 私はこう感じた! 考えた!

〇私はこう考える:佐藤久夫、赤松英知

<佐藤>

・総括所見を見た感想は「非常に詳しい」。1条から33条まで、すべてにコメントされている。国別審査としてこれほど多いのは初めて。これまで100か国以上の審査が終わっているが、最初は15条くらいの記載だった。最近の韓国やオーストラリアで30条くらい。英文18ページという分量もこれまでで最大。従来は1013ページくらい。

・また、パラレルレポートをよく読んでいる、と思った。「障害者権利条約の日本語訳のおかしさ」という指摘があったが、これは最初のパラレルレポートで書いたこと。建設的対話の中でも議論はなかったと思う。

・政府の取り組みでは、17項目が評価されている。他国と比較して数が多い。評価された内容を見ると一般的な項目も多く、どういう意味があるのか研究したい。

・評価基準を他国比較で考察すると、特に甘くも厳しくもないと感じた。これまでも先進国と思われるニュージーランドやオランダに対しても厳しい評価があったり、発展途上国に対して評価するところもあったりした。

・欠格条項の存在について指摘されている。他国の所見にはなく初めての指摘と思う。パラレルレポートの成果と考える。

 

<赤松>

・「8条:啓発」 国家戦略の策定が勧告されている。

・「11条:災害」 合理的配慮について法律上に規定することが勧告されている。

・「14条:自由」 強制入院の廃止が勧告されている。

・「15条:取扱」 行為の強制につながるとして法律の廃止が勧告されている。

・「17条:個人の保護」 優生裁判の救済の徹底が勧告されている。

・「19条:自立生活」 脱施設、長期入院改善、地域の支援体制作り、が強く要請された。

・「27条:労働」 福祉的就労の一般的就労への移行加速が勧告された。きょうされんとしては、福祉的就労の現時点での廃止は現実として働く場の喪失につながる現実があるとして今後の議論が必要と考えている。

 

〇初の対日審査から未来に向けて:藤井克徳(JD代表/きょうされん専務理事)

JDFと権利条約への取り組みは20年にわたる。今回の総括所見で「一周した」という感慨がある。総括所見では圧倒的な文字数で懸念事項が示されている。いくつか指摘したい。

・今後の日本の障害者施策は、これまでの延長線上であってはならない、脱却することが求められている。総括所見は未来を照らす羅針盤になる。

・事業体系としては、「骨格提言」に基づいた見直しの必要性がある。さらに、国の組織についても考えたい。こども家庭庁のように障害者支援を専門とする独立した組織が必要ではないか。このあたりは、私たちもふくらましていく取り組みが必要と考えている。

・過去を振り返る「物差し」としての役割について。過去の過ちは変えられないが位置づけは変えられる。精神障害者医療、施設中心主義、手話言語の扱いなどについて、理由を考え見方を発展させたい。

・総括所見についていくつか述べたい。

 「7番目:一般原則」 a)からe)まですべて深いが特にa)が深い。「父権主義的アプローチ」が否定された。はっとする指摘。これまで当人によかれと思ってやっていることが人権侵害になっていた。「あてがいぶち」であり、これは誤り。権利の主体が当事者になっていない。これでよしとする思い込みがあった。本人主体の人権モデルと調和しない。

 「72番目」 最後のフォローアップ。政府に対して総括所見の「自治体、専門職、メディアへの伝達」の実施を求める勧告があった。政府は実施するだろうか。

74番目」 政府に対して「NGO、障害者、障害者団体」に対して、手話や政府のHP掲載を含め、勧告内容を普及させるよう要請している。

・これらを含めて、政府は勧告内容を受け止め、経済力ある国家として実施に取り組んでほしい。

・私たちとしては、総括所見を政府への要請だけではなく、運動する私たちへ示されているものとしてもとらえたい。運動の指針として、行動戦略を練ることが必要になる。

・今回の総括所見に加えて、骨格提言も併せて大切にしたい。また、権利条約本体をあらためて学び直したい。条約は、発展途上国から先進国まですべての国家に照準があっている。条約にある条約の意義を増幅させる仕掛け(締約国会議、懸念事項の提起・勧告)を使い切りましょう。私たちも増幅させる仕掛けを考えたい。

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2022年10月20日 (木)

健康普及員スキルアップ講座

 10月10日(月・祝)に「健康普及員スキルアップ講座」がオンラインで開催しました。

 健康普及員は、健康・頸肩腕障害に関する学習を通して知識を持ち、健康問題について日常的に関心をもって取り組んでいただくことを目的に2017年から創設し、全国各支部に複数人がいる事を目指しています。

 学習する内容として、A:手話通訳制度・健康(運動論)、B:手話通訳者の頸肩腕障害(医学論)、C:メンタルヘルス(こころの健康)、D:ストレッチ等(予防)の4単位を履修するようになっています。全通研健康対策部が開催する「健康普及員養成研修会」では2日間で4単位を開講するので、これを受けると健康普及員証となります。この集中型以外には、3団体(全日本ろうあ連盟・日本手話通訳士協会・全国手話通訳問題研究会)開催の健康フォーラムや各ブロックや支部で開催される研修会(上記4単位関連内容で事前に申請し、健康対策部の承認が必要になります)に参加し、4単位を受講することでも健康普及員になれます。なお、健康普及員には「健康普及員証」を、支部を通してお渡ししています。(支部には代議員会の時に手渡ししています)

 6年を経て、全国に多くの健康普及員が誕生し活動されていますが、健康普及員向けのスキルアップ研修を望む声が多くありました。そのため、新たな知識を得てより活動できるようにと、今回「スキルアップ研修」を企画しました。講義は2コマです。

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 1つ目は、「慢性の痛みの治療と予防」…滋賀医科大学・社会医学講座・衛生学部門の北原照代医師の講演でした。北原先生は、「手話通訳と頸肩腕障害」の第一人者である垰田和史先生(現:びわこリハビリテーション専門大学教授)と一緒に長く全通研と関わり、協力をいただいている先生です。

 まず、「痛みとは」正常な状態では痛みはない。急性の痛みは体を守るための反応で、傷ついた部分を一時的に安静にさせて修復を促すのでいわば必要なもの。身体や命を守るために欠かせない役割がある。

 今回問題とするのは、急性期を過ぎても概ね3か月以上続く慢性の痛みです。多少痛くても我慢して無理をしてしまったり、治療の開始が遅れたり適切な治療が受けられなかったりすることで痛みは慢性化します。その痛みの治療には、薬物療法、認知行動療法、理学療法、手術、ブロック治療、鍼灸治療等、さまざまな治療法があるのでそれらを上手く選択することになります。最近は、これらの専門家がチームで身体的・心理的にアプローチする集学的治療が行われているそうです。

 慢性の痛みのゴールは「全く痛くなくなりました」ではなく、痛みをコントロールすることで痛みを軽くして日常生活を送れるようになることです。それで職場復帰しても、以前通りの働き方ではなく、工夫・コントロールが必要です。

 慢性痛を防ぐには、早めの対応が重要とのこと!早く気づいて早く対応しましょう。

C D

 2つ目は、「「手話通訳者にかかわる労災・公務災害~働く人々の補償はどうなっているの?~」社会保険労務士・手話通訳士の寺垣英比古氏の講演でした。

 まず、労災・公務災害が認められる範囲として「労働者」としての身分がある人が前提になるということで、労働者とはどういった立場の人なのかの説明がありました。

 労災・公務災害の認定には条件があって、業務中や通勤途上で起きた尿器やケガであり、原因が仕事にあることです。また、手話通訳者が労災・公務災害を認められる条件も示されました。

 次に補償制度の内容について、労災・公務災害(地方公務員災害補償基金)・公務災害(条例による公務災害)に分け、対象機関・対象者・補償機関の説明があり、加えて、会計年度任用職員について細かな説明がありました。

 

 参加者の多くが興味を持ち、質問も多かったです。

オンラインでの研修ということで120人弱の参加がありました。

健康普及員研修では4単位の内容が決まっていますが、このスキルアップ研修ではこれまでの内容とは少し違った視点からの学びとなりました。

関わってみてはじめて分かることがたくさんありますが、こうして学ぶことで、今後役立つのだと思います。視野が少し広がりました。

また次の機会にぜひ参加してください。

                            (健康対策部員 井田睦子)

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2022年10月11日 (火)

第1回全通研Webアカデミー

第1回全通研Webアカデミー

 2022年9月24日(土)に第1回全通研Webアカデミーが開催されました。

当日は200名を超える参加がありました。

 講師はNPO法人日本障害者協議会代表・きょうされん専務理事 藤井克徳氏から「障害のある人の分岐点」~きっと役に立ちます 生き証人が語る本当のこと~ をテーマに講演をしていただきました。

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 講演の合間に、藤井氏が書いた詩(2篇)を全通研理事が心を込めて朗読しました。

 はじめにロシアによるウクライナ侵攻と障害者について、現地の写真と共に

『連帯の祈り』(朗読 吉野理事)から藤井氏の想いが伝わってきました。

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 日本の終戦後から国際障害者年(1981年)を経て現在に至るまでの経過と、その分岐点の事象について

 優生保護法については、「障害者は不良だ!」など、国民に誤った障害者観を定着させたことをお聞きし、胸が苦しくなりました。当時を知らない世代の私たちが知っておかなければならない事だと、改めて考えさせられました。

 「当時は合法だった」という言葉に打ちひしがれた被害者の鎮魂の想いを詩にした『訣別』(朗読 新船理事)をご紹介いただきました。

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 障害者権利条約の採択(2006年)と先日行われた日本の履行状況についての国連審査から見える多くの課題。そして私たちが今後目指し、取り組まなければならない医学モデルから社会モデル/人権モデルへの転換についてのお話もありました。

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 「障害とはその人が取り巻く社会との関係にある。環境によって障害が重くもなり、軽くもなる」

 これは私の中で一番心に響いた言葉でした。

 

 最後に聴講した皆さまからいただいた質問にお答えいただき、終了しました。

Q1)私たちが学んだことを他の人に伝える時に意識しておくべきことは?

A1) 知る→分かる→伝える→動くというサイクルが必要で、それが無いと忘却してしまう。「知る=分かる」ではない。そのためには学習が必要。

 

Q2)津久井やまゆり園のような事件を二度と起こさないためには?

A2)誰かに言われて正しいことをするということではなく、人権を守るということは外側からではできない。内側から人権を守るという内発的な考え方が必要。

 

Q3)自立支援協議会などの地域の会議が機能していないので何かアドバイスを。

A3)会議のマンネリ、サビ付きを防ぐこと。そのためには、会議に魅力があることと、記録も含めて段取りが大切。

 

 参加者へのアンケートでは、意見・感想が多く寄せられ、実りある学習会となりました。

 次回Webアカデミーは11月に開催予定です。たくさんのご参加をお待ちしております!

 

                        (文/全通研理事 髙橋 祐哉)

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2022年10月 4日 (火)

全通研組織担当者交流会

全通研組織担当者交流会を開催しました。

 2022年9月19日(月・祝)10時から「全通研組織担当者交流会」を開催しました。昨年度に引き続き第2回目の開催となりました。

 この交流会は、支部組織担当者との情報交換、交流することを目的としており集合形式にしたいところでしたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、昨年に引き続きオンライン形式による場となりました。

 司会の吉野州正理事より当日のスケジュール説明、事務連絡について諸連絡を行いました。

 次に荻島部長から、過日、開催されたブロック別組織担当者会議でのご協力の御礼から始まり、昨年に引き続き全国の仲間と意見交換と交流を深め支部活動につなげていただきたいと挨拶がありました。また組織担当者MLの活用が少ないことから、改めてMLを1つのツールとして活用してもらうことをお願いしたところです。

1_20221004152901 開会挨拶時の荻島組織部長

 今回は34支部から47名の参加があり、組織部員含め総勢51名の参加となりました。

 昨年に引き続き、Zoomブレイクアウトルームを使い7つのグループに分けました。事前に参加者へは、グループ分けを行うことを連絡していたので、本番時はスムーズに各ルームに移動することができました。まず、各グループで司会と発表者を決めてもらってから意見交換を行いました。

 意見交換のテーマとして3本柱を設定しました。

(1)若年層を増やす取り組み

(2)会員拡大や継続の呼びかけで工夫していること

(3)運営委員の確保について

 

 話し合ってもらった後は各グループからの発表となりましたが、主な発表内容について以下の点を抜粋しす。

 

【若年層を増やす取り組み】

・若年層の会員獲得には苦労している。大学生や専門学校生との繋がりを意識し、教育機関への働きかけや周知活動をしているが入会になかなか結びつかない。

・若い世代は、「運動」といった社会活動への関心が薄いと感じる。

・コロナ禍により仲間との出会いの場が少ない、集まれないといった点から周知活動が思うようにできなかった。

・学生会費という設定も必要なのではないか。これは全通研としても考えなければならない事項と思う。

 

【会員拡大や継続の呼びかけで工夫していること】

・最近は何でもメールやラインといったツールで連絡を取り合っているが、便箋で気持ちをお伝えし、丁寧に対応している。その成果もあり、つなぎとめている会員もいる

・長く会員継続をしていた会員が退会すると寂しい。理由として本人の体調面や家庭の都合など、仕方なく退会される方もいる。年齢的、体力的な問題で共に活動ができない理由での退会だととても残念に思うが、動けなくても会員でいることでの繋がりや情報を得るという点を説明し会員を継続してもらうこと、支部活動の経済的支援に繋がることなど、運営面でとても助かることをお願いし継続してもらっている会員もいる。

・コロナ禍によって、集まる、語り合う場が減少してしまい、代わりにオンラインによる行事開催を行うと、ICT不得意の会員がどうしても敬遠してしまう。そうならないようICTが堪能な役員や会員の協力を得て、視聴や参加方法について一緒に学習するという気持ちを持ち接している。

・支部独自の動画を作成し、会員のみ視聴できる取り組みを行っている。会員でなければ視聴できないといった心理も働くのか、それで入会や継続されてる会員もいる。コロナ禍により学習する機会は以前と比べ減少したが、在宅や好きな時間で視聴できる手法により、新たな学習機会を設けることができたことで、会員拡大への1つの契機となっている。

 

【運営委員の確保について】

・役員=負担が大きいというイメージがある。だが新たな出会いや知見の向上という新しい経験もできたりと役員になることで新たな発見もある。

・新しく会員になった方で、「手話を勉強したい」、「もっと知りたい」といった理由から会員に結びついた。それ以上のことは敬遠してしまう。手話や知識のみ得るのではなく、共に活動するという喜びを分かち合える活動の姿を見せることを心掛けている。

・おおよその地区では、役員になっていただくよう個別に声をかけお願いしているが、選挙で人選しているところもあり、非常に驚いた。

 

【その他】

・現在、会員現勢等で会員が減少しているイメージがあるが、現場の支部活動において大きく減少したという実感は少ない。大きく減少していないということは、活動や運動の必要性を理解していただいている会員が多いということ。今後、支部活動を活性化することで会員数も戻ると考える。これからの活動を共にがんばっていきましょう!

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発表者


愛媛支部 石川幸代さん


大分支部 久松久仁子さん


山口支部 山根かおるさん


滋賀支部 山本ひろみさん


秋田支部 小山内広美さん


広島支部 箱田祥乃さん


神奈川支部 湯本和彦さん


静岡支部 望月正明さん


 

 限られた時間の中で、テーマによっては時間不足になったところもありましたが、それぞれのグループで活発な意見交換が行えました。支部活動も現状に即した活動、オンラインの利点を活用した活動など、とても創意工夫がされている様子が伺えました。最後に参加者全員で記念撮影を行い終了となりました。

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 コロナ禍初期は「集合ができない」「開催中止」など、活動ができずどうしてよいものか悩んでいたかと思います。しかし、ICT活用による新たな手法が生まれ、状況に応じてはハイブリット式としてICTが苦手な会員でも学習が継続できるよう、個々のニーズに合わせた活動という新しい概念が生まれました。また支部活動においてもオンライン、ハイブリットなどが今では当たり前となって、活動を停滞することなく前進していることに感銘いたします。

 今後もこの交流事業を通じ、全通研活動を発展させ、盛り上げていきたいですね。

 

                        (文・写真/全通研組織部 間舩博)

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